No.366
2026.01.12 メモと日記,作品感想 編集 BlueSky favoriteいいね | [[LIKE_COUNT]] thank you
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あらすじ:フランスのシャンソン歌手、エディット・ピアフは貧困街の生まれ。路上での歌を見出され、表舞台を駆け上がっていく。殺人容疑をかけられ、最愛の男を事故でなくし、モルヒネに溺れながら、愛に溢れた人生を駆けていく。
大竹しのぶさんの演技を昔から好いていた。普段の演技めいた愛らしいおばさまの立ち居振る舞いから豹変し、役に没入する姿を見て、テレビの前で圧倒されていた。大竹しのぶが舞台に立てなくなる前に、彼女の演技を生で観てみたかった。
「ピアフ」の大竹しのぶはまさしくピアフであった。下品で、セックスのことを考えていて、ワガママで、礼儀知らず。大股で歩き、笑いと言えば卑猥なこと。恋に生き、薬に溺れ、自制心はなく、しかし歌は心の底をまるごとひっくり返したような深い歌声であった。
どれほど日常に近いテーマであっても、舞台に立つ役者の振る舞いは、日常の人間のそれとは異なる。舞台においては、客席からの見え方・聞こえ方を意識するからだ。
たとえば、1対1で話していても、互いに真横になって話すことはあまりない。正面を向いて話すことすらある。奥の客席に届くように響く声で話し、後ろの客からも見えるように大仰にリアクションする。
「ピアフ」には舞台慣れした役者、歌の上手い役者が並んでいた。しかし演劇だった。(別にそれで正しい)
大竹しのぶが恐ろしいのは、ただピアフが舞台にそのままいて、演劇のように見えないことである。大竹しのぶはどこまでも下品なアバズレ女である薬で気の狂った女、ピアフだった。確かにその振る舞いは舞台映えして、早口の言葉でも客席に理解させることができているのに、ひとりだけあまりにも あるがまま舞台に立っていて、周りはそのあるがままの女を囲んで演劇していた。
舞台が終わり、照明が消え、また点いた途端、無邪気なおばさまである「大竹しのぶ」がそこにあった。アクのない無邪気な笑顔で、舞台を颯爽と駆けてカーテンコールに答えていた。先程まで大股で、ガニ股でドタバタと歩く品のない女だったはずなのに。
ピアフという女のめちゃくちゃで愛がこびりついた女の人生を舞台にしているので、恋とセックスと情動で動くタイプが主人公であり、全く好みのタイプのストーリーではないはずだったが、そんな女から目が離せず、釘付けになってしまった。
演劇部出身が言うなと言う話だが、演劇というのは話を端折ることが多く、脳内でストーリーを繋げなければならない割に、登場人物が多くて区別つかず、それでいてミュージカルみたいに歌やダンスの技能を楽しむことができないので、正直あんまり得意じゃない。が、ここまで演技という技能に圧倒できるなら、演劇も良いものだなと思いました。
P.S.
ピアフの楽曲を帰ってから聴いた。あの時代のシャンソンのアコーディオンの軽快さが好きだ。しばらく聴き流してみようと思う。
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