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沢村さんの話を受けて、「人に興味がない」ってなんだろう? ということを語ろうと思った。のだけれど、全く意見がまとまらないので、今回は違う話をしようと思う。一気に書き上げたので、まとなりのなさはご容赦いただきたい。

今回は、変わってしまった私の感性と古の少女漫画の話をしましょう。



Blueskyで先日「僕と彼女の×××」(以下、×××(読み:ペケみっつ))という少女漫画の話をしたところ、沢村さんも含め何人かが反応してくださった。

「×××」という作品がずっと前から好きだった。姉の本棚からこっそり抜き取った漫画の中でも、数冊しか覚えていないタイトルのひとつだ。
姉にバレないように毎日少しずつ読み進めていたが、続きが読みたくて仕方なかったことを覚えている。
しかし、現代になって読むと、自分の中の感情のささくれを無視できずに読めない。自分の変化と度量のなさが悲しいと言う話である。

「×××」は森永あい先生が2001年〜2013年に連載していたラブコメ漫画である。
ざっくりとあらすじを言う。以下、ネタバレ注意である。

〜〜〜
主人公のあきらは美男子だが、軟弱な性格でいつも弱気な男である。
そんな彼は、下品かつ暴力的…だけれども絶世の美少女である菜々子に密かに恋心を抱いていた。

あきらと菜々子は怪しげな実験に巻き込まれた結果、なんと中身が入れ替わってしまう!

あきらの美青年といえる見た目と菜々子の粗暴な性格は見事にマッチし、菜々子も入れ替わった自身の身体を気に入ってしまう。
そして、元々の菜々子の女友達(椎名)を自分の彼女にしてしまう暴挙に出る。

菜々子に対して恋心を抱いていたあきらは、内心複雑で…

そんな折、元のあきらの親友である千本木が、菜々子(in あきら)に告白してきたのだ!どうなる、入れ替わり生活!どうなる、あきらの身体!
〜〜〜

上記あらすじでは、あえて「美男子だが軟弱」「暴力的だが美女」という言葉を使ってみた。
やはり昔の少女漫画らしく、令和の倫理観ではなかなかみない価値観が盛りだくさんなのである。

「×××」は、あらすじだけでもわかる通り、旧来のジェンダー観がものすごく強い。
男性は男らしい方がかっこいい、女性は女らしいほうが可愛い。なお、男は浮気しても許される。

ルッキズムも根強い。かっこいい/かわいい人間とブサイクな人間の描き分けが極端であり、美男・美女は何をしても許されるし恵まれている。一方、ブサイクな人間が恋する様はギャグとして扱われている。

これは「×××」だけでなく森永あい先生の作品に共通していることで、別作の「山田太郎ものがたり」も同様の価値観で描かれている。
経済力がない男は魅力がないけれども、美貌には抗えないこともある…みたいな価値観が面白さの根底にある作品である。

「山田太郎ものがたり」では、両親の経済的DVがギャグ描写として描かれるシーンもある。主人公山田太郎は顔が美しい。
しかし、多人数兄弟で非常に貧乏であり、太郎がバイトで身を粉にしながら、兄弟と共に爪に火を灯して生活している。
そんな貧乏な暮らしの中、母親が意味不明なものに大金を注ぎ込んでしまう場面が頻発する。
なお、これにより、太郎が得た金がリセットされる。山田太郎が貧乏というキャラクターの一貫性を、母親の金遣いの荒さによって保っている仕組みなわけだ。

両作品にとても批判的に見えると思うが、まったく批判したいわけではない。
2000年代〜2010年前半の作品は、この倫理観でしっかり大衆を楽しませることができた。
そもそも、2020年後半に生きる我々をターゲットにして描かれたものではない。私の今の倫理観で見たら、心が毛羽立つ部分があると言う話である。

「×××」も「山田太郎ものがたり」も今読んでもとても面白い作品だ。ただ、私の中でどうしても理性が引っかかってしまう。
自分の中の倫理観を戻したいわけでもないのだが、純粋に楽しめないことが寂しいと感じる。
物語を楽しむことは自分の心の中の話であり、何を考えていてもいいはずだ。理性と感性をバトルさせなくたって、心のままに楽しんでいいはずなのだ。
わざわざ「この親経済的DVだろ…」と心の中でアラートを上げなくていい。しかしどうしても、感性に食い込むほどに、私の中の倫理は変わってしまった。

さて、私は別の場所で、現代のBL二次創作のテンプレート的表現の源流は2000〜2010年代前半の少女漫画から来ていると説いたこと がある。

ざっくり言うと、2000年代〜2010年代前半の少女漫画に影響を受けた女性がBL二次創作を描いているため、原作のキャラクターの性格に関わらず、以下のような少女漫画表現が攻め(ヒーロー)と受け(ヒロイン)に適用されるという話である。
・笑顔のヒロインにドキッ…!///とするヒーロー
・ヒロインに対して「かわいすぎ…っ!///」と口を押さえるヒーロー
・ヒロインにゾッコンのヒーローに対してモブの「眼科いけ」
・ヒーローがかっこいいことをした時にすぐ照れるヒロイン(カァァ…///)
・お互いがお互いの顔を好いており、顔に免じがち
・キスやらセックスがやたら上手くて抗えない

照れすぎだろう。なお、「///」とは、古のインターネット小説における照れを表す表現である。
人を好きになることができる人は、このように照れてばかりなのだろうか。私がデミセクシャル(※)なので知らないだけなのだろうか。他人に恋心を抱く人がいたら教えてください。
※アロマンスの一種で、あんまり恋愛感情を抱かない恋愛指向のこと

上記の言い種から察せられる通り、今の私はこのような少女漫画の影響を受けたテンプレート表現をどうも楽しめない。
単純にデミセクシャルの自認が深く影響しており、人間の関係性が育っていく様を感情由来ではなく理性由来で見てしまうのである。
人に魅力を感じるには理由が必要で、それが恋情で片付けられると話が破綻しているように感じてしまう。(追記参照)

もちろん物語をどう楽しもうが個人の自由だ。そして、物語の価値観が作者の価値観というわけではない。
また、違った価値観であってもnot for meであるだけで、存在していいのだ。口や文面で、私はそう言う。

なのに、どこか私の中で世の中の「浄化」ー自分の価値観への変更ーを自分勝手に求めてしまっている。
その浄化を求める自分の度量の狭さが、結構苦しい。心から割り切れるようになる日がくるのだろうか。

私はこの自認にひっついて育った倫理観を気に入っている。しかし、どこか心が狭まったような気がしてならないのだ。

森永あい作品に登場するキャラクターは欠点が多い。面食いばかりだし、性欲にまっすぐだし、他人を侮辱する。

一方、現代のキャラクターは、かなり倫理観がしっかりしていると思う。ジャンプのラブコメからも、なんの特徴もない主人公が激モテする話はなくなっている。
優しく家庭的で惚れる要素のある人間描写をしっかり描いた上で、モテている話ばかりになっている。(「ひまてん」「アオのハコ」など)

森永あい作品のようなキャラクターがいていい、とも正直理性では言い難い。
ただ、こういったキャラクターはもう生まれないだろうと思うと、このような描写をぎりぎり楽しめる世代でよかったとも思うのだ。

色々と書いたものの、結局自分の倫理観に合った作品やキャラクターが好きになる。私の中の理性が私の中の感情と手を握ってくれる漫画を快適に楽しんでいる。

最近のおすすめ漫画は「やちるさんはほめるとのびる」である。八尺の血を持つ背の大きな女性と、巨女フェチの男性とのボーイミーツガール作品である。
両思いだが付き合っていない男女の性的同意(しかも、女→男の加害)、LGBTの透明化などの人間が生きていたら生じ得るかもしれない話を、そのキャラクターのまま描いている。
その人間性のリアルさが面白い。し、なによりこのような題材を扱っていながら、やちるさんがしっかりとえっちに描かれているのがすごい。
キャラクターの人間性をあまり心配させず、しかしながらこんなえっちなラブコメって作れるのか〜と感心してしまった。
https://comic-days.com/episode/255091296...

沢村さんは何か、ここ最近で自分の中のコンプライアンスが変わってしまって楽しめなくなったものはありますか。そしてぜひ、語りたいことがあれば教えてください。

ーーー
追記
恋愛感情や性欲は、理性と反対にあるように感じられることから、スキャンダラスで下品なものと扱われる文脈も多々ある。
なので、アセクシャル亜種がこのような立場でいるだけで、まるでこちらが清潔な正義のように「見え」て、「汚い我々」を批判されたと感じて怒る人がいる。
特に私は声の大きな感想屋であり、自分の好みに合った作品を長文ベタ褒めするので、not for me作品への(無)反応との温度差も怒りに薪をくべているのだと思う。

上記の通り、どこか浄化の思想があるにはあるので、感情で言えば剣を構える勢いではある。
が、理性で言えば好みなぞ争っても仕方ない。別に恋愛感情や性欲は99%の人が抱くことであり、人間の一大コンテンツなのである。
for youがnot for meなだけなのである。そして、恋愛・性愛の強い作品が存在することは素晴らしく、またそれを楽しめることも人生の彩りになっているのである。

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